3Dキャラクターモデルの仕事の流れについて

こんにちは。デザイナーのQです。

今回は3Dキャラクターモデルの仕事の全体的な流れである「見積もり」や「スケジュール作成」、「実際のワークフロー」がどのようになっているのかを、開発現場の視点から紹介したいと思います。

全体の流れ

この記事で紹介する全体の流れは以下のとおりです。

  1. 見積もりプロセス
  2. スケジュール作成
  3. 試作とルック検証
  4. 量産段階
  5. クオリティアップ

見積もりプロセス

企画段階

企画概要書が完成すると、全体のボリュームが把握できるようになります。

希望発売時期から逆算して「マスター」→「ALL IN」→「β」→「α」→「1st」などの各マイルストーンの時期を設定します。

Information

■逆算方式によるマイルストーンの設定

逆算方式で見積もりを行うといくつかのメリットが得られます。

  1. ゴール達成のためのプロセスとスケジュールが把握しやすい
  2. 見積もりの精度が上がる
  3. あらかじめリスクとなる要素を発見しやすい
  4. 方向性のブレを避けやすい
  5. 明確なマイルストーンによりモチベーション向上につながる

これらのメリットによって、目標達成の可能性を高めることができます。

工数の見積もり

工数の見積もりは以下の手順で行います。

  1. 企画内容から必要なアセットの総数を算出
  2. 各アセットの作成に必要な工数を見積もる
  3. トータルの工数を計算(アセット総数 × 各アセットの工数)
  4. トータル工数を人日、人月に換算
  5. 開発期間中に必要な人月を割り出す

これを使って、キャラクターモデル1体の完成の工数を考えていきます。例えば以下の流れで作成を進めていくとします。

  • モデル形状作成
  • UV展開
  • テクスチャ作成
  • スキニング調整
  • 実機上での確認・調整
  • 各種監修完了

工程別の工数見積もり例

割り出した工程から、各工数を見積もります。例えば以下のようになりました。

Information

この見積もりは過去プロジェクトの経験、または経験者からの意見をもらったりして、なるべく正確な値を目指します

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■バッファの重要性

「バッファ」とは、スケジュールに余裕を持って意図的に「空き時間」を作ることで、見積もりの際に重要となる要素です。これにはいくつかの理由があります。

  1. 予期せぬ事態への対応:バッファを用意することで、プロジェクトの遅延リスクを軽減し、重要なマイルストーンを確実に達成する可能性を上げることができます
  2. ストレス軽減:バッファがあることでチームメンバーの焦りや過度のストレスを軽減できます。これにより、ミスを減らし、全体的なパフォーマンスを向上させることができます
  3. 柔軟な対応力の向上:ゲーム開発は不確実性の高い問題が発生しやすいです。そういった問題が起きたときに、バッファがあることで、追加の要件や変更にも対応しやすくなります

過度のバッファは非効率を生む可能性がありますが、適切なバッファは予期せぬ事態に対応し、重要なタスクを確実に完遂させるための重要な要素となります。

スケジュール作成

工程と工数の見積もりができると、スケジュール作成ができます。

  1. 各マイルストーンの定義に合わせて必要なアセットを特定
  2. マイルストーンごとに必要な要素を分解
  3. 必要なキャラクターモデルとモーションを列挙
  4. プロジェクト開始から各マイルストーンまでのスケジュールを組み立て

これらはプロジェクトのボリュームやアサインされる担当者の人数や能力、マイルストーンの締め切りなど様々な要因によって、打ち合わせを繰り返しながら決定してきます。

スケジュール作成の例

スケジュールはマイルストーンの定義に従い、何が必要なのかを決めることで作成してきます。

例えば1stROMの定義が以下の場合…

  • 定義1:施設内を歩ける
  • 定義2:バトル空間で基本的なバトルが出来る

これらの定義を満たすために必要な要素を分解していきます。

これを基にすると、1stROMまでに、
キャラモデル班としては最低でも、下記の3体が必要になってきます。

  • プレイヤモデル: 1体
  • 仲間モデル:   1体
  • 敵モデル:    1体
Information

※場合によっては仲間モデルはプレイヤーモデルをダミーとして動かしてもOK、ということもあるかもしれません。

スケジュールが厳しいプロジェクトの場合、こういった相談や交渉をすることも求められます。

さらに、

  • キャラクターのイラスト
  • キャラクターのルック検証

などが別途必要な場合、これらも考慮してスケジュールを埋めていく必要が出てきます。

試作とルック検証

通常はいきなり本制作に取り掛かるのではなく、試作品によってデザインの方向性(ルック検証)を決めていく過程が発生します。

試作モデル作成

試作モデルの作成においては、大まかに以下の要素が考慮されます。

  • 対応プラットフォームのスペックを考慮
  • ゲームの要求事項に基づいて仮の仕様を設定

ルック検証

試作モデル作成を行いルック検証として、以下の要素を考慮します。

  • 最終的な見た目の目標設定
  • キャラクターのアップの程度の決定
  • 必要なシェーダーの検討

負荷検証

ここの段階では、ルック検証と並行して「負荷検証」を行います。

アプリケーションとしてモデルデータを動かすためには、ゲームを成立させる要素と表現可能な情報量との兼ね合いが必要です。一般的なゲームアプリケーションにおいては以下の要素を考慮します。

  • メモリ負荷:ポリゴン数、テクスチャサイズと枚数、キャラクター数、ロードタイミング、1体あたりの容量制限など
  • 処理負荷:ポリゴン数、テクスチャサイズと枚数、骨の数、アニメーション制御方法など
  • 実装方法:アニメーションの制御はどうするか。モデル切り替え? テクスチャパターン? UVアニメ?

仕様策定とワークフロー構築

これらの検証をもとに、仕様策定とワークフローの構築を進めていきます。

  • ルックと各種仕様の決定後、情報をまとめる
  • 効率的なワークフローとパイプラインの整備

量産段階

ゲームを作るには、限られた期間で数多くのモデルデータを効率良く作ることが求められます。そこでモデルデータを量産するために、以下の要素を考慮します。

  • 決定したルールに従って大量生産できているかどうか
  • リーダーによる品質チェック:
    • 仕様適合性
      • データの正確性
      • モデル形状とトポロジーの品質
      • UVの効率性
      • テクスチャの品質
      • 容量制限の遵守
      • データ整理状況
Information

データは単に量産するだけでなく、ゲーム内容と齟齬がないデータかどうか、データの一貫性があるかどうか、など品質のチェックも重要です。

そのためデザインリーダーやチーム内のチェックによって品質が保たれているか、適時確認を行います。

クオリティアップ

データは作成したら終わりではありません。実際にゲームに組み込むと様々な問題が発生します。

  • 思ったりよりもメモリ使用量や処理負荷が大きいため、テクスチャサイズやポリゴン数の削減する
  • 見た目のクオリティを上げるため細かくメッシュやUVを作り込んでいく、アニメーションを調整する
  • ゲーム仕様の変更によりデータ変更を余儀なくされる…などなど
Information

この作業は大変ですが、ゲームの見た目がどんどん良くなっていく過程でもありますので、苦労に見合った満足感が得られる工程でもあります。

完成!

以上の工程を通じて、効率的かつ高品質な3Dキャラクターモデルの制作を行えるように、日々切磋琢磨しております。

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