3Dキャラクターモデルの仕事の流れについて

こんにちは。デザイナーのQです。
今回は3Dキャラクターモデルの仕事の全体的な流れである「見積もり」や「スケジュール作成」、「実際のワークフロー」がどのようになっているのかを、開発現場の視点から紹介したいと思います。
全体の流れ
この記事で紹介する全体の流れは以下のとおりです。
- 見積もりプロセス
- スケジュール作成
- 試作とルック検証
- 量産段階
- クオリティアップ
見積もりプロセス
企画段階
企画概要書が完成すると、全体のボリュームが把握できるようになります。
希望発売時期から逆算して「マスター」→「ALL IN」→「β」→「α」→「1st」などの各マイルストーンの時期を設定します。
工数の見積もり
工数の見積もりは以下の手順で行います。
- 企画内容から必要なアセットの総数を算出
- 各アセットの作成に必要な工数を見積もる
- トータルの工数を計算(アセット総数 × 各アセットの工数)
- トータル工数を人日、人月に換算
- 開発期間中に必要な人月を割り出す
これを使って、キャラクターモデル1体の完成の工数を考えていきます。例えば以下の流れで作成を進めていくとします。
- モデル形状作成
- UV展開
- テクスチャ作成
- スキニング調整
- 実機上での確認・調整
- 各種監修完了
工程別の工数見積もり例
割り出した工程から、各工数を見積もります。例えば以下のようになりました。

スケジュール作成
工程と工数の見積もりができると、スケジュール作成ができます。
- 各マイルストーンの定義に合わせて必要なアセットを特定
- マイルストーンごとに必要な要素を分解
- 必要なキャラクターモデルとモーションを列挙
- プロジェクト開始から各マイルストーンまでのスケジュールを組み立て
これらはプロジェクトのボリュームやアサインされる担当者の人数や能力、マイルストーンの締め切りなど様々な要因によって、打ち合わせを繰り返しながら決定してきます。
スケジュール作成の例
スケジュールはマイルストーンの定義に従い、何が必要なのかを決めることで作成してきます。
例えば1stROMの定義が以下の場合…
- 定義1:施設内を歩ける
- 定義2:バトル空間で基本的なバトルが出来る
これらの定義を満たすために必要な要素を分解していきます。

これを基にすると、1stROMまでに、
キャラモデル班としては最低でも、下記の3体が必要になってきます。
- プレイヤモデル: 1体
- 仲間モデル: 1体
- 敵モデル: 1体
さらに、
- キャラクターのイラスト
- キャラクターのルック検証
などが別途必要な場合、これらも考慮してスケジュールを埋めていく必要が出てきます。
試作とルック検証
通常はいきなり本制作に取り掛かるのではなく、試作品によってデザインの方向性(ルック検証)を決めていく過程が発生します。
試作モデル作成
試作モデルの作成においては、大まかに以下の要素が考慮されます。
- 対応プラットフォームのスペックを考慮
- ゲームの要求事項に基づいて仮の仕様を設定
ルック検証
試作モデル作成を行いルック検証として、以下の要素を考慮します。
- 最終的な見た目の目標設定
- キャラクターのアップの程度の決定
- 必要なシェーダーの検討
負荷検証
ここの段階では、ルック検証と並行して「負荷検証」を行います。
アプリケーションとしてモデルデータを動かすためには、ゲームを成立させる要素と表現可能な情報量との兼ね合いが必要です。一般的なゲームアプリケーションにおいては以下の要素を考慮します。
- メモリ負荷:ポリゴン数、テクスチャサイズと枚数、キャラクター数、ロードタイミング、1体あたりの容量制限など
- 処理負荷:ポリゴン数、テクスチャサイズと枚数、骨の数、アニメーション制御方法など
- 実装方法:アニメーションの制御はどうするか。モデル切り替え? テクスチャパターン? UVアニメ?
仕様策定とワークフロー構築
これらの検証をもとに、仕様策定とワークフローの構築を進めていきます。
- ルックと各種仕様の決定後、情報をまとめる
- 効率的なワークフローとパイプラインの整備
量産段階
ゲームを作るには、限られた期間で数多くのモデルデータを効率良く作ることが求められます。そこでモデルデータを量産するために、以下の要素を考慮します。
- 決定したルールに従って大量生産できているかどうか
- リーダーによる品質チェック:
- 仕様適合性
- データの正確性
- モデル形状とトポロジーの品質
- UVの効率性
- テクスチャの品質
- 容量制限の遵守
- データ整理状況
- 仕様適合性
クオリティアップ
データは作成したら終わりではありません。実際にゲームに組み込むと様々な問題が発生します。
- 思ったりよりもメモリ使用量や処理負荷が大きいため、テクスチャサイズやポリゴン数の削減する
- 見た目のクオリティを上げるため細かくメッシュやUVを作り込んでいく、アニメーションを調整する
- ゲーム仕様の変更によりデータ変更を余儀なくされる…などなど
完成!
以上の工程を通じて、効率的かつ高品質な3Dキャラクターモデルの制作を行えるように、日々切磋琢磨しております。